time of love

東京国際フォーラムに行ってきた。
真梨子さんに会いにコンサートに行くようになって、もうすぐ20年である。
よくコンサート帰りには、真梨子さんの声の響きと優しい手の感触、そしてどこかまぶしそうな人見知りの真梨子さんの瞳の輝きを思い出していた。
たしか真梨子さんとは17回握手している。
街灯のイルミネーションまでもが、何か違う明日を予感させ「駅」にたどり着く時間がコンサートの余韻であった。

フォーラムは、「銀座」にある。
正確に言えば、有楽町と銀座は反対側なのだが、銀座のスカイラウンジからライトアップされた東京駅、ウォーターフロントの高層建築物やイルミネーションに飾られた銀座の街角をすれちがう人々、ヘッドライトの輝き。そのようなものを見ていると、まるでニューヨークの片隅で様々な人々の生活を見ているような錯覚に陥った。毎日を生きている人々が行きかう銀座の交差点、そこに東京国際フォーラムはあると感じとってよい。そういうコンサートホールである。

東京駅はどこかへ旅立つ駅だ。
しかし、旅立つ駅である以上に、実は、家路に着くための始発駅でもある。それは東京に住んでいる私ですら、ちょっぴり感傷的になる駅である。


今回のコンセプトはなんなのであろうか・・・・・
もちろん真梨子さんが輝いていて、素晴らしい歌唱に包みこまれるだけでよい。しかし、何か表現し得ない思いが胸のどこかにあった。
「去るものは日々に疎し」 「電話」。
この2曲が加わっていたら、もっと見えていたと思う。

今回のコンセプトは、「帰る部屋」なのだと思う。もう一度曲順を思い出してほしい。

銀座や六本木で、恋を語り合っていた20代。また激しい恋愛、さびしい思いのつのる恋。そして訪れる失恋。こんなことの繰り返しも日々の忙しさにまぎれてしまう。
ふと昔の恋人から手紙が届く。「結婚する」という。もし「やり直したい」と電話がきたら戸惑いながらも涙したかも知れない。そんな時期に届いた手紙だ。
祝福・・・・そんな複雑な思いを街角で、コートの襟を立てて歩く人影に投影してしまう自分。
あなたがいたから、生きてこれたのだ・・・


あなたと生きたかった・・・・・・・・・
でも帰る部屋には、もうあなたはいないのだ。そして時間ももう戻らない。永遠のときを感じていたいのに。こんな想いをだれかに聞いてもらいたい・・・・・・・

こんな切ない思いを、異郷の街並みを情景描写しながら感じ取らせるLIVEなのだ。
だから今回の「フレンズ」のイルミネーションには、数時間前に見た銀座の夜景がオーバーラップして、胸にジーンとくるものがあった。だからこそ、光り輝く道をあなたと一緒に歩いていきたいのだと。

家路につく夜道を歩きながら、帰る家には、
ずっと前から一緒に真梨子さんのコンサートを
見てきた彼女(妻)がいる。そんなささやかな幸
せのありがたさを感じていた。
そして、真梨子さんの歌声が心の底で響いてい
た。その真梨子さんは、確かに「電話」を歌って
いたのである。

コンサートで聴けなかった曲を聴いたかのような
感覚にとらわれたのはこのLIVEの奥深さを物語
る以外の何ものでもない。そして、私は日常のな
かにある幸せをいつまでも感じ取りたいから
「橋真梨子の世界」を愛し続けたいと思うので
ある。(2002/12/2)
                                    

2002

ct VITL60880

CD VICL60880

ビクターエンタテインメント株式会社




.




.




.

付録リーフレットから






.







.